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影にかがよふ

九州北部ではなごり雪が降ったそうである。
私の住む街にも、あられが疎らに降っていた。
これから春になるのだろう。

音階を伴った声や、まだ訪れたことのないふるさとの樹氷を思わせる色、
この街にはないそれらをどんな風に位置づけたところで、また評価しようとしたところで、到底変えられないことがある。
それらのことが、私にとって懐かしい思い出でもあり、私の内部にある様々なものごとを規定しきっている、ということである。
それはまごうかたなき価値のあることであると、今なら強く宣言できる。

時間によって様々なことが濾過されていく中で、それでも今こうして手もとに残ったものが、きらびやかで落ち着いた気持ちになれる思い出ばかりであることに私は驚いた。その時から最近までずっと、これからも君のことを憎んで生きていくのだろうと思っていたから。
空間的・時間的に距離をとってみて初めて、楽しかったという印象だけが残る――そんな関係はそう簡単に作れるものではない。ここに至って初めて、その期間にさざめいた無数の出来事の点綴を、半ば活けづくりみたいにして、その色味だけを残すことに成功したのかもしれない。

私はもう、君と会うことはないだろう。
君にとって私にまつわる思い出なんて決して、そんな色味を帯びてはいないだろうから。
そして、私が犯した罪は決して、時間によってさえ意味を失いはしないから。

心に固く積もっていた深い根雪が、春とともにゆっくり溶け出して、私はその雪解け水の冷たさにおどろいた。

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「本当の優しさ」「自分を好きになる」

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