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根雪

あの日の夜の話。
「水族館の子」にメールで「映画の予定が取れそうにない」と言われた私は、その子に電話をかけた。
私は友達と、閉店作業が終わったあとのバイト先に居た。
水族館の子は家にいた。

電話を掛ける前に、その友達にメールのやりとりを見せて「正直どう思う?俺は、100%ないと思う」と言った。
彼女は「うん…でも○○(私の名前。以降は「みかきもり」とする)は、このままで終われるの?」と言った。
私は「終われない」と強く答えた。
彼女は「じゃあ、とりあえずここに電話で呼んでみて、それでだめなら電話で想いを打ち明けたらいいと思う」と言ってくれた。
私は店を出た。

水族館の子に電話をかけるのは初めてのことだった。
「今から3人でラーメンでも食べにいかない?」
彼女はとても行きたそうだった(3人とも仲が良い)が、もう布団に入っており、次の日にテストがあるからさすがに寝ますという返事が返ってきた。
一通り、そんな他愛もないやりとりをして、やっぱり来てくれないなと思った私は意を決した。そして、
「映画、やっぱり気が進まなかった?」
と聞いた。
「気が進まないのか、本当に予定が詰まっているだけなのか、はっきり教えて欲しい」

彼女はちょっと沈黙して、
「実は、気になる人がいて、その人のこともあって映画をためらってた、というのは正直あります」
と答えた。(※後日、これは嘘だと分かるけど、なんとなくそんな気はしていた)

私は外で電話を掛けていた。
さすがに風が冷たかったが、不思議と寒くは感じなかった。

「そっか。…」
言おう、と思った。
不思議と緊張はあまりなかった。私にとって彼女のことが好きだということは、もはや当たり前すぎることだったからなのかもしれない。ありがとうという気持ちと、好きだという気持ちを、悔いがないように自分の言葉で言おうと思った。

「いつも、僕のために時間を割いて会ってくれて本当に感謝してる。
その中で君のいいところをたくさん知ることが出来た。
俺は君のことが本当に好きだ。ずっと君の笑顔を見ていたいし、他の誰とも付き合って欲しくない」といった。そして、
「でも、その気持ちは受け入れてもらえないってことでいいのかな」と付け加えた。

彼女は
「みかきもりさんは、安心感があって、優しくて頼りがいがあって、でも何回か出かけてみて、それ以上の感情は生まれませんでした」
と答えてくれた。

私はもう一度「そっか」とだけ言って、それから少しの間だけ沈黙が流れた。
「自分の気持ちに素直になって、自分の恋愛を頑張るんだよ!じゃあ、またバイト先でね」
と言って、電話を切った。

私の「好き」の半分は、「誰にも渡したくない」という強い嫉妬で出来ている。
でももう半分は、「幸せになってほしい」なのだな、とこの夜気付いた。
だから、誰とも付き合って欲しくないという気持ちと、私の好きな人がその子の好きな人と結ばれるのを応援したいという気持ちは、どちらも自分の心にあるのだ。

***

店に戻って、友達にぽつりぽつりと事の次第を話した。
彼女は真剣に聴いてくれた。
そして、
「あの子は、後悔すればいいよ」と言った。

どうしてもこのまま家に帰りたくなかったので、結局ふたりでカラオケに行って朝まで歌い尽くした。
気分もいくらか和らいだ。
歌い終わったときにはもう始発が出ている時間だった。彼女を駅まで送っているときに、彼女は半ば冗談めかして
「でもあたしだったら、バイト先の男で彼氏を選ぶんだったら、みかきもりと付き合うなぁ」と言ってくれた。
私は「彼氏いるじゃん!」と笑った。でもとても嬉しかった。自分が(冗談でも)そういうことを言われる日が来るなんて、夢にも思っていなかった。
多分だけど、私は誰かにそんなことを言って欲しかっただけなのかもしれない。

***

それから3日後、店で「水族館の子」に会った。
私はバイトに入ってなかったのだが、私は「やっぱり、会って話したい」とメールで伝え、彼女も「私も会ってちゃんと話したいです」と言ってくれたので、閉店後の店に寄った。

彼女の表情を見たその瞬間に、この数日間で本当に色々なことを考えたり、感じたりしてくれていたのが分かった。
諸々のことを不安がっていることもすぐに察することができた。
それが何よりも嬉しかったし、その不安をすぐに解いてあげたいと思った。

私は色々なことを伝えた。
私が「勝手に」好きになったのだから、あなたが私の気持ちを受け入れられないからといって、罪悪感めいたものを感じる必要はないということ。
だから気まずさを感じる必要もないし、感じさせないように努力するということ。
傷つくことは最初から覚悟の上であり、むしろ本望であるということ。
逆に、告白によってあなたを傷つけてしまって申し訳ないということ。
どういうところが好きかということ、いつから好きかということ。
女性としても好きだけど友達(後輩)としても好きなので、その友達(後輩)としての関係は維持したいということ。
「一緒にいて楽しい」と感じてくれたのがとても嬉しいということ。
私は好きであることをやめないし(そもそも、やめられない)、これからも頑張るということ。
そして、今はダメだという現実はしっかりと受け止めた上で、いつか絶対に再挑戦するということ。

彼女もまた真剣に聴いてくれた。いくぶんほっとしたようでもあった。そして、デートを断った本当の理由も話してくれた。

「みかきもりさんとは一緒にいて楽しくて、安心感もあって、全然嫌いじゃなくてむしろ好きだけど、3回おでかけしてもそれ以上の感情にはならなくて、しっくりこないまま付き合うのは互いに良くないと思ってました。
告白されても受け入れることは多分できないし、それによって今までの私とみかきもりさんとの関係が壊れるのが嫌でした。数度もデートしてきたし、次のデートは告白が予想されるから、それはダメだろと思って断ってきました」

ここで私はやっと、彼女に求めていることが何なのかはっきりわかった。それは「付き合う」ということではなかった。
1つは、「自分が好きな人に、私のことを好きになってもらうこと」
もう1つは、「一緒にいて楽しむこと・楽しんでもらうこと」

「付き合う」ってことがどういうことなのかは正直わからない。けれど多分「付き合う」という営為は上の2つが達成されたその延長線上にあるものなのであって、それだけに拘るのは本質的ではない。
単純に「恋人がいる」というステータスを自慢したいがためだけに「形式的に」付き合うだけなら、他にいくらでも方法はあるし、それが出来るだけの力はこの1年でついただろう。でもそこに何の意味もないということは、自分の恋愛や、周囲の恋愛を通じて学んだことだ。

そして、こんな考え方が出来るようになったということが、自分のコンプレックスの最も大きいものが消えた何よりの証拠であるとも感じる。
生まれてから1年前までは、好きな女の子から全く相手にもされず、「彼女が出来ない」というのは(実際にはつくろうとすらしていなかっただけだが)大きなコンプレックスであった。
だが、この1年の経験を通じて承認欲求が満たされるにつれて、また周囲にある本物の恋愛や偽物の恋愛を色々見てきて、「付き合っている」という状態に拘るのはあんまり意味が無いのだなと気付いた。「付き合っている」というのはあくまで1つの形式にすぎない。ゴールでもない。あくまで結果的についてくるものでしかない。

単に彼女が欲しいだけなら、ちょろそうな相手を選んでその気にさせればよいだけの話だ。
だけどそれは本当に幸せだろうか。誰でもそんなものは虚しいだけだろう。
(ただ、矛盾するようだけど、「好きな子を1人落とす」ためにこそ、「色んな人からモテる」方法論を身につけておく必要は大きいと感じる。「もてなくてもいい、ただ好きな人を1人落とせればいい」という意見は多いけど、実際はそんなに甘くはないだろう)

では、何に拘るべきなのか?
私の答えは先述の通りである。
「自分が好きな人に、私のことを好きになってもらうこと」
「一緒にいて楽しむこと・楽しんでもらうこと」

そして、私は「水族館の子」にたいしては、「一緒にいて楽しむこと・楽しんでもらうこと」という目標は達成していた。
ただし彼女にとって、「一緒にいて楽しい」が「もっと一緒にいたい」にまで昇華していなかっただけの話である。

だから、私が今後やるべきことは2つである。
2人で会える関係を維持することと、もっと楽しみ・楽しんでもらえるように色々考え、努力すること。
もっと一緒にいたいなぁと思ってもらうにはそれしかないし、その延長線上に「付き合う」があるはずだ。
たとえ付き合えなくても、充実した関係になれれば、今の私は満足である。
楽しくなければ意味はない。

私は、「付き合えないからといってじゃあ一緒に遊ぶこともしない、なんてことはない。好きだという気持ちが受け入れてもらえないからといって、誰かを恨むということもない(あるわけない)。確かに君のことは女性としても好きだけど、友達としても好きだから、その関係を壊したくない。
デートは嫌なら断ってほしいけど、嫌じゃないのなら断ってほしくない。
一緒にいて楽しいと思ってくれているなら、一緒に映画を観に行こう」と言った。
私はどこまでも理屈っぽい。それが自分なのだ。


彼女は絢爛な笑顔で、「はい」と言ってくれた。

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Author:みかきもり
みかきもり/翠凜/りぬす

「本当の優しさ」「自分を好きになる」

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